「口は災いの元」、「沈黙は金」、「男は黙ってサッポロビール」、「女三人よれば姦しい」。これらの格言は言葉によるコミュニケーションに対する不信感と男女差別を表している。世間と波風を立てずに空気を読みながら暮らすことは、男性中心の閉ざされた農村社会においては、社会の維持に有効であったことだろう。しかし、多様な文化を持つ人々からなる複雑な現代社会においては、積極的にコミュニケーションを図る姿勢が求められる。グローバル化した国際社会では尚更である。空気を読むだけのコミュニケーションでは現状を維持するだけである。誰もが能力を発揮できる寛容な社会を構築するためには、どんな時には黙り、どんな時には微笑むか、自分の言語と非言語を時と場合に応じて適切に使い分けるコミュニケーション能力が必要である。
 本授業は、言語と非言語のコミュニケーションについての基礎的な概念、理論、技術を紹介し、人間のコミュニケーションを学問的に理解することを目的とする。対人、グループ、組織、マスメディア、異文化などのレベル、および、授業、家庭、職場、インターネット、広告、紛争などのコンテクストにおいて生じている様々な問題を、コミュニケーションの理論を用いて捉え直す。ロールプレイ、ディスカッション、スピーチなどのアクティビティを通じてコミュニケーションの経験を積み、コミュニケーションに対する積極的な姿勢を身につける。コミュニケーションの学問的理解と技術は、家族、友人関係だけでなく、地域活動や就職活動にも役立つだろう。